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骨粗鬆症:ヒトとマウスの骨粗鬆症に対する遺伝的影響の全容
Nature Genetics 51, 2 doi: 10.1038/s41588-018-0302-x
骨粗鬆症は頻度の高い加齢関連疾患であり、主に骨密度(BMD)の測定により診断される。本研究では、42万6824人を対象として踵骨定量的超音波法によりBMDを推定し、その遺伝的決定要因を評価した。ゲノムレベルで有意な518の座位(うち301座位は新規)が同定され、それによりBMDの分散の20%を説明できた。また、約120万人を対象とした解析により、13の骨折関連座位が同定され、その全てがBMD推定値(eBMD)との関連を有していた。次に、クロマチン構造や接近可能なクロマチン部位といった細胞特異的な特徴を基に、目的遺伝子を同定した。同定された遺伝子には、骨の密度や強度に影響を及ぼすことが知られている遺伝子が多く含まれていた〔最大オッズ比(OR) = 58、P = 1 × 10−75〕。さらに、同定された目的遺伝子をノックアウトした126匹のマウスについて骨格表現型の高効率スクリーニングを実施し、526匹の非選択的ノックアウト系統マウスと比較して骨格表現型の異常の頻度が高いことを見いだした(P < 0.0001)。同定された遺伝子の1つであるDAAM2を詳細に解析したところ、骨強度が石灰化の程度とは不釣り合いなほど低下することが判明した。本研究で明らかとなった遺伝的影響の全容は、関連SNPを原因遺伝子に結び付ける際の根拠となり、さらには骨粗鬆症の病態生理に新たな知見を付け加え、薬物開発の指標ともなるものである。