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クロマチン:EZH2の発がん性変異は、クロマチンドメイン内のエピジェネティックな状態、転写、構造の変化を引き起こす
Nature Genetics 51, 3 doi: 10.1038/s41588-018-0338-y
クロマチンは、TAD(topologically associating domain)へと組み立てられるが、それぞれのTADは特徴的なヒストン標識を持つ。がんでは、EZH2(enhancer of zeste homolog 2)をコードする遺伝子の機能獲得変異が起こり、転写抑制に関連するヒストン3 Lys27トリメチル化(H3K27me3)のゲノム規模での増加がもたらされる。しかし、このようなエピジェネティックな変化が、クロマチンドメインの構造や機能に及ぼす影響は調べられていない。本論文では、変異したEZH2によりもたらされるTADの変化とエピジェネティックな状態および転写の変化の間に、機能的相互作用があることを示す。変化したEZH2〔p.Tyr646*(EZH2Y646X)〕は、ドメイン全体のサイレンシングを導き、多数の腫瘍抑制因子が相乗的に不活性化することが分かった。TAD内の遺伝子サイレンシングは、遺伝子のプロモーター領域間の相互作用の変化と関連していた。EZH2Y646Xを薬理学的に阻害すると、遺伝子発現やクロマチン相互作用が回復したことは重要である。我々の結果から、EZH2Y646Xがクロマチンドメインのトポロジーや機能を変化させて、発がんプログラムを相乗的に促進することが示された。