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DNA複製:1細胞解析が明らかにした哺乳類細胞におけるDNA複製プログラムのゲノムワイドな安定性

Nature Genetics 51, 3 doi: 10.1038/s41588-019-0347-5

本論文では、scRepli-seq法と名付けた単一細胞ゲノムワイドDNA複製解析法について、報告する。この方法論は、複製前後のDNA間のコピー数の差を、ゲノムワイドに測定するものである。このscRepli-seq法により、複製ドメイン構造は個々のマウス胚性幹(ES)細胞間で保存されていることが実証できた。ES細胞は分化すると異なる複製プロファイルを示すが、このプロファイルも個々の分化細胞間で保存されていた。ハプロタイプごとにscRepli-seq解析を行うと、相同な常染色体同士は互いに類似した複製プロファイルを示したが、一方で、雌の不活性型X染色体は、活性型X染色体よりも明らかに遅れて複製されていた。ただし、細胞間での複製タイミングの不均一性はわずかながら存在しており、例えば、細胞間での不均一性はS期の開始後間もなくと終了間際が最も小さかった。さらに、発生過程において複製タイミング制御を受けるドメインは、他のドメインに比べて不均一性が高いことが示され、この不均一性が発生過程における可塑性に関連する可能性が示唆された。また、対立遺伝子発現の不均衡(allelic expression imbalance)は、対立遺伝子間の複製タイミングの非同時性と強く関連することが分かった。これらの結果は、DNA複製制御を1細胞レベルで理解するための基礎となるとともに、ゲノムの三次元構造についての洞察を与えるものでもある。

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