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がん:転位因子はヒトのがんにおいて広範ながん遺伝子の発現を促す
Nature Genetics 51, 4 doi: 10.1038/s41588-019-0373-3
転位因子(TE)はゲノム中に多数存在し、調節配列の豊富な遺伝的供給源となる。TE内の潜在的な調節配列は、がんにおいてエピジェネティックに再活性化され、がん外適応と呼ばれる過程において、発がんに影響を及ぼす可能性がある。しかし、TEのがん外適応事象が、複数のがんタイプにわたってどの程度見られるのか、またその影響力については、ほとんど分かっていない。本研究では、15種類のがんについて、7769の腫瘍試料と625の正常試料のデータセットを解析した。その結果、129のTEについて潜在的プロモーター活性化現象が見つかり、そのうち、106のがん遺伝子の関与が3864の腫瘍において確認された。我々はさらに、その中の1つのAluJb-LIN28Bについて解析を進めた。このTEを遺伝学的に欠失させると、がん遺伝子の発現が失われ、そのプロモーター活性は動的なDNAメチル化により調節されていた。この結果は、1つのTEが、がん遺伝子活性化に必要かつ十分であることを示している。まとめると、我々の結果は、TEのがん外適応について包括的なプロファイル特性を示し、普遍的に見られるこの現象が、無差別的ながん遺伝子活性化の重要な機構であり、最終的には腫瘍発生へとつながることを明らかにしている。