Perspective

高精度医療:現行の多遺伝子リスクスコアの臨床使用は健康格差を拡大させる恐れがある

Nature Genetics 51, 4 doi: 10.1038/s41588-019-0379-x

多遺伝子リスクスコア(PRS)を使用した精密医療は、生物医学的な転帰を改善させる可能性がある。しかし、その臨床への導入にあたって倫理的・科学的に重要な問題となるのは、現在利用できるPRSの予測精度が、ヨーロッパ系の人々と非ヨーロッパ系の人々とを比較した場合、前者で数倍高いことである。この格差は、ゲノムワイド関連解析の研究対象がヨーロッパ系の人々に大きく偏っていることから必然的に生じている。通常の臨床バイオマーカーや処方薬の場合、特定の患者群に対して有効性が高くなるということはあるにせよ、ヨーロッパ系の集団全般の有効性が常に高くなるということはない。ところが、現在利用できるPRSを臨床で使用した場合には、常にヨーロッパ系の集団において、より正確な予測が可能となるのである。この大きな格差を解消するために解析対象の多様性を増大した検討が実施され、非ヨーロッパ系のサンプルサイズがこれまでの大規模研究よりかなり小さい場合であっても、有望な結果が得られている。PRSの能力を完全かつ公平に引き出すためには、遺伝学的解析において研究対象の多様性を優先的に拡大する必要がある。また、医療の恩恵を十分に受けていない人々の健康格差を拡大させないためにも、要約統計量は共有できるように公開しなければならない。

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