Perspective
集団遺伝学:変異を許容しないヒト遺伝子の評価
Nature Genetics 51, 5 doi: 10.1038/s41588-019-0383-1
遺伝子に生じた単一の短縮型変異が有害と考えられるか否かを知ることは、動物モデルを用いた研究からヒトの疾患感受性遺伝子のマッピングまで、さまざまな研究で有用である。有害か否かを評価する方法の開発を目指して、タンパク質短縮型バリアント(PTV)や他のタイプの変異が存在しない、あるいは非常に低頻度に維持されている遺伝子(すなわち、変異を「許容できない」と考えられる遺伝子)を大規模標本集団中から見つけ出すための手法が数多く開発されてきた。その中でも特に、機能喪失変異を許容しない確率(probability of being loss-of-function intolerant;pLI)が、広く用いられる尺度となっている。この尺度は、実際のPTV数と予測されるPTV数の差に基づいて、遺伝子を中立、劣性(潜性)、ハプロ不全の3つのカテゴリーに分類するものである。こうした集団遺伝学的アプローチは多くの場合に有用であろう。ただし、ここで明らかにしていくように、これらが反映しているのはヘテロ接合体に働く選択の強さであり、優性(顕性)に関しての情報ではないし、ハプロ不全の程度を表すものでもない。