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染色体分離:ヒト大腸がんオルガノイドにおける染色体不安定性の進行と核型の進化
Nature Genetics 51, 5 doi: 10.1038/s41588-019-0399-6
染色体分離エラーは、ヒトのがんの特徴である異数性とゲノム不均一性を引き起こす。これらの異常が高頻度で持続すること[染色体不安定性(CIN)]は、腫瘍の進化や治療の奏効に大きな影響を及ぼすと予測されている。しかし、ヒトの腫瘍においてCINがどの程度よく見られるのかは分かっていない。本論文では、患者由来腫瘍のオルガノイド(腫瘍PDO)を三次元生細胞イメージングで観察することにより、CINは、大腸がんにおいて、マイクロサテライト不安定性といった背景となる遺伝的変化に関係なく広範囲に見られることを示す。細胞運命追跡から、有糸分裂エラーの後には細胞死が起こることが多いが、一部の腫瘍PDOは有糸分裂エラーにほとんど反応しないことが分かった。単一細胞の核型塩基配列決定(single-cell karyotype sequencing; scKaryo-seq)から、腫瘍PDOのコピー数変化には不均一性が見られることが確認され、また、in vitroのモノクローナル腫瘍細胞株では経時的に新規核型が進化することが分かった。我々は、大腸がんオルガノイドではCINの進行がよく見られると結論し、CINレベルおよび有糸分裂エラー許容度が異数性の全体像と核型の不均一性を形成すると提案する。