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がん転移:大腸がんの早期段階で転移播種が起こる定量的証拠
Nature Genetics 51, 7 doi: 10.1038/s41588-019-0423-x
転移が起こるタイミングや分子的決定要因は解明されておらず、治療や予防の取り組みの障害となっている。本論文では、肝臓あるいは脳に転移が見られる大腸がん患者23人の118の生検についてのエキソーム塩基配列決定データを解析することで、この致死的過程の進化動態の特徴を明らかにした。このデータから、原発性腫瘍と転移性腫瘍の間のゲノムの相違は少ないこと、また、カノニカルなドライバー遺伝子が早期段階に獲得されたことが分かった。空間的腫瘍増殖モデルや統計学的推定の枠組み内での解析から、早期段階に播種された細胞が一般的(81%;評価可能な患者21人のうち17人)に転移の種となるが、この段階のがんは臨床的に検出されない(典型的には0.01 cm3未満)ことが示された。2751人の大腸がん患者からなる独立したコホートにおいて、早期段階のドライバーと転移の間の関連を検証すると、これらが転移のバイオマーカーとして有用であることが実証された。この概念的かつ解析的な枠組みから、全身播種が大腸がんの早期段階に起こり得るというin vivoの定量的証拠が示され、また、患者を層別化して腫瘍形成のカノニカルなドライバーを治療標的とする戦略が明らかになった。