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タンパク質立体構造予測:高深度変異体スキャンによるタンパク質の立体構造予測
Nature Genetics 51, 7 doi: 10.1038/s41588-019-0432-9
実施が容易となってきているハイスループット変異体スキャンを利用した、実験による立体構造決定法を報告する。進化過程で自然に生じた配列の共変異の解析により、タンパク質やRNAの折りたたみを計算できることが知られている。我々は、「実験室」で合成した配列バリアントからも立体構造を予測できるか否かを検討した。5種類の大規模変異体スキャンデータの解析から、実験において正のエピスタシスが最大となる残基同士の組み合わせにより、立体構造の折りたたみを決定できることが分かった。ここでは、3種類のタンパク質、1種類のリボザイム、および1種類のタンパク質間相互作用に関する遺伝学的スクリーニングの結果から、エピスタシスが最大となる組み合わせの検索により、巨大分子の分子内あるいは分子間の近接残基(3D contact)を明らかにできることを実証する。実験によって得られたこれらのエピスタシスデータのみを用いて、GB1ドメインおよびWWドメインの折りたたみを計算可能であった(結晶構造からの偏差は、それぞれ1.8 Åおよび2.1 Å)。我々はさらに、近接残基の予測に必要な変異体の数を削減するための戦略を提案し、ゲノミクスの手法により効率的に立体構造を予測できることを示す。