Perspective
植物遺伝学:遺伝子バンクのゲノミクスが作物の多様性の保全と植物育種との架け橋になる
Nature Genetics 51, 7 doi: 10.1038/s41588-019-0443-6
遺伝子バンクの長期的な使命は、将来的な作物改良のための農業遺産として植物の遺伝資源を保存することである。種子貯蔵と植物繁殖のための作業手順は数十年前からすでに確立しているが、在来種や近縁野生種から有益な対立遺伝子を見つけ、その移入により品種改良を行うための効率的な方法はいまだ完成していない。ここでは、ゲノム塩基配列情報を基に作成された分子学的な来歴記録(分子パスポートデータ)を、バンク内およびバンク間で各個体に共通の管理手段として利用する方法の可能性について概説する。育種方法論の最近の進歩とも相まって、遺伝子バンクのバイオデジタルリソースセンターへの転換は、有用な遺伝的多様性の選択と、育種計画におけるその利用を促進し、過去の作物多様性へのアクセスを容易にするであろう。遺伝子バンク管理者、植物遺伝学者、育種家の長期的な共同研究目標として我々が提案したいのは、自然界にみられる遺伝的多様性のカタログを統合することと、植物に有用な形質をもたらす生物学的機構の解明である。