転写:ヒトゲノムからの遺伝子発現を調節する被転写シス調節配列について、その動態およびトポロジーをNET-CAGE法が明らかにする
Nature Genetics 51, 9 doi: 10.1038/s41588-019-0485-9
プロモーターとエンハンサーは遺伝子の発現を制御する役割を担う重要なシス調節配列であり、これらが機能することで細胞種特異的なトランスクリプトームが作り出される。しかしながら、細胞ごとに異なるその個々の領域や相互作用については未だ完全には理解されていない。そこで我々は、エンハンサーより転写されるRNAといった不安定な転写産物のものを含む、新生RNAの5′末端を高感度で検出するNET-CAGE(native elongating transcript-cap analysis of gene expression)法を開発したので報告する。本手法は簡単かつロバストな方法であり、さまざまな細胞や組織に適用することができる。これを用いることでRNAの合成と分解を転写開始位置ごとに解析し、異なるプロモーターの使用が転写産物の安定性にどのように影響するかを明らかにした。新旧RNAの入れ替わり速度に影響されず、測定したシス調節配列からの転写活性情報により、エンハンサーとプロモーターの対が一般的には刺激に対して同時に活性化されることを明らかにした。NET-CAGE法データとクロマチン相互作用マップとの統合により、シス調節配列群はその細胞種特異性に応じてトポロジー構造を構成するよう相互作用することを示した。新規のものを含むエンハンサー領域を高感度で特定し、さらにスーパーエンハンサー内で転写が起こる主要な位置を明らかにした。NET-CAGEを用いて測定したヒトおよびマウスのデータセットは、FANTOM5で我々が構築した被転写エンハンサー・アトラスを大きく拡張するものであり、これは生物医学研究に広く適用できる。