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シングルセル解析:プール化シングルセル遺伝学的スクリーニングにより上皮間葉転換の連続体において調節チェックポイントを特定
Nature Genetics 51, 9 doi: 10.1038/s41588-019-0489-5
プール化遺伝的スクリーニングとシングルセル軌跡(trajectory)解析を統合することで、発生や疾患において細胞決定を導く遺伝的構造を明らかにできる可能性がある。本研究では、このパラダイムにのっとって、上皮間葉転換(EMT)を制御する遺伝学的回路について調べた。我々は、1細胞RNA塩基配列解読により、TGF-β(トランスフォーミング増殖因子β)の存在下と非存在下において、空間的に制御された中で自発的なEMTを起こしている上皮細胞のプロファイリングを行った。擬空間(pseudospatial)軌道解析では、EMTの個別の「部分的」段階に対抗するものとして、遺伝子調節の連続的な波が見つかった。上皮状態からの脱出と完全な間葉系表現型の獲得には、KRASが関連していた。プール化シングルセルCRISPR–Cas9スクリーニングにより、KRASの調節因子をはじめとするEMTに関連する受容体や転写因子を特定することができ、それらの喪失はEMTへの進行を遅らせることが分かった。KRASエフェクターのMEKやその上流活性化因子であるEGFRやMETを抑制すると、主要なシグナル伝達事象の遮断が、EMT連続体における調節的「チェックポイント」(別個の段階からなるように見える)を示すことが実証され、これにより、EMTを制御するプログラムについての対立する見解が両立できることが分かった。