Analysis
疾患リスク:英国バイオバンクの医療データを用いた遺伝学的リスクの疾患横断的成分の決定
Nature Genetics 52, 1 doi: 10.1038/s41588-019-0550-4
遺伝的リスク因子は、多くの場合、ヒトのありふれた疾患の複数に対して影響を及ぼす。従って、それらの疾患に共通する病態生理学的経路を同定する手掛かりや、治療法開発のヒントが得られる。しかしながら、疾患リスクの遺伝学的プロファイルの系統的な決定はこれまで困難であった。その理由は、大規模コホートの包括的な臨床データが利用できなかったことに加え、多数の表現型データを扱う際に必要になる膨大量かつ多様な影響力のデータを処理できる統計手法がほとんど存在しなかったためである。本研究では、英国バイオバンクに登録された大規模かつ多様な集団を反映する32万644人の参加者に由来するデータに、我々が開発した疾患横断的アプローチを適用した。すなわち、ゲノム規模で独立した3025の座位について、1万9155の疾患分類コードを用いて遺伝的リスクプロファイルのクラスター解析を行った。その結果、339の疾患関連プロファイルを同定することができた。さらに複数の手法を用いて、各クラスターをその基盤にある生物学的経路に関連付けた。クラスター解析により、疾患に対するリスクの分散と共分散を分解することができ、それによって、基盤にある生物学的プロセスとその影響を同定できることを明らかにした。また、クラスター解析によって疾患間の関係を定義し、その情報が治療に役立ち得ることを示した。