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冠動脈疾患:民族特異的ならびに民族横断的なゲノムワイド解析により、冠動脈疾患の民族特異的ならびに民族間で共通のリスク座位を同定する
Nature Genetics 52, 11 doi: 10.1038/s41588-020-0705-3
日本人集団における冠動脈疾患(CAD)の遺伝学的特性を明らかにする目的で、日本人16万8228人(症例2万5892人と対照14万2336人)を対象とした大規模なゲノムワイド関連解析を実施した。この解析では、まず、日本人(症例1781人と対照2636人)のハプロタイプデータからなる参照パネルを新たに作成し、それを用いて遺伝子型のインピュテーション解析を行った。8つの新規感受性座位と、疾患の重症度および心血管死亡率の増加に寄与する日本人に特異的なレアバリアントが検出された。民族横断的なメタ解析により、さらに35の新規座位が見いだされた。このメタ解析の結果に基づいてCADのポリジェニックリスクスコア(PRS)を算出したところ、日本人集団のみ、またはヨーロッパ人集団のみを対象としたゲノムワイド関連解析の結果から算出したスコアを上回る予測性能が得られた。このPRSにより、さまざまな臨床パラメーターの中からリスク因子の優先順位付けを行うことができ、また、長期的な心血管死亡リスクの高い人を識別することができた。本研究で得られた知見は、CADの遺伝学的特性に関する臨床的理解に資するとともに、民族横断的メタ解析が非ヨーロッパ人集団のPRSの性能改善に役立つことを示唆するものである。