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がんゲノム:がんゲノム中の体細胞変異の分布は3次元クロマチン構造によって変化する
Nature Genetics 52, 11 doi: 10.1038/s41588-020-0708-0
ドライバー遺伝子の体細胞変異は、最終的にはがんの発生につながる可能性がある。従って、体細胞変異ががんゲノム中に蓄積する仕組みや、体細胞変異を生み出す根本要因を理解することは、新たな治療戦略を開発する上で非常に重要である。今回我々は、ゲノムの空間的な組織化と特異的な変異過程の間の相互作用を理解するために、42種類のヒトがんについて、腫瘍と正常組織のペア3000対の全ゲノムデータセットを解析した。この解析から、がんゲノム中の体細胞変異量の変化は、トポロジカルドメイン(TAD)の境界と共局在することが明らかになった。ドメインの境界は、複製のタイミングを測定するよりも、変異量の変化を追跡するための優れた代理指標の構成要素となる。また、変異過程の違いが体細胞変異の分布の違いをもたらしており、活性化ドメインで変異が生じる過程もあれば、不活性化ドメインで変異が生じる過程もあった。まとめると、3次元的なゲノム組織化と活発な変異過程の間の相互作用は、ヒトがんで見られる大規模な変異率の変動に大きな影響を及ぼすことが明らかになった。