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多遺伝子リスクスコア:ポリジェニックリスクスコアの民族集団間移植性は、予測される細胞種特異的調節配列内のバリアントを優先することで改善する
Nature Genetics 52, 12 doi: 10.1038/s41588-020-00740-8
ポリジェニックリスクスコアの民族集団間移植性の低さは、遺伝学的研究が主にヨーロッパ民族を対象として行われていることと、集団間で共通の原因バリアントに関する知識が限られていることに起因している。タグ付けされたバリアントよりも機能的バリアントを優先することによって、この移植性を改善できる可能性がある。本研究では、我々はまず5345のエピジェネティックデータセットを集約し、245の細胞種における142の転写因子の結合パターンを予測することにより、707の細胞種特異的IMPACT調節配列アノテーションの情報資源を構築した。次に、我々はヨーロッパ系集団(平均n ≈ 189,000)および東アジア系集団(平均n ≈ 157,000)を対象とした111のゲノムワイド関連解析の要約統計量を用いて、ありふれたSNPの遺伝率を分類した。IMPACTアノテーションにより説明可能なSNP遺伝率は集団間で一致しており、機能的バリアントが集団間で共有されていることが示唆された。IMPACTを用いたバリアントの優先順位付けにより、解析対象とした21の表現型全てにおいて、ポリジェニックリスクスコアのヨーロッパ系集団から東アジア系集団への民族集団間移植性を改善することができた(R2の平均相対増加率49.9%)。本研究により、遺伝学的データの民族集団間移植性の改善に、IMPACTのような機能的アノテーションが重要な役割を果たすことが明らかとなった。