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がん種横断的全ゲノム解析:ヒトがんではクロマチンを折りたたむドメインの破壊が体細胞ゲノム再編成により起こる
Nature Genetics 52, 3 doi: 10.1038/s41588-019-0564-y
クロマチンは連続的に折りたたまれて積み重なることにより、直線状のDNAをきちんと収納している。同一TAD(topologically associating domain)内の遺伝子は、同様の発現やヒストン修飾のプロファイルを示し、また、異なるドメインを分離する境界によって、こうした特性の安定性が高められている。実際に、ヒトがんでドメインが破壊されると、遺伝子発現の誤調節につながり得る。しかし、ヒトがんでドメインが破壊される頻度は明らかになっていない。本論文では、国際がんゲノムコンソーシアム(ICGC:International Cancer Genome Consortium)およびがんゲノムアトラス(TCGA:The Cancer Genome Atlas)におけるがん種横断的全ゲノム解析(PCAWG:Pan-Cancer Analysis of Whole Genomes)コンソーシアムの一環として、38種類の腫瘍にわたる2658例のがんの全ゲノム塩基配列決定データを集めて、28万8457の体細胞構造多様性(SV)を解析し、TAD全体でのSVの分布と影響を明らかにした。SVは異なるTADの融合につながる可能性があり、また、複雑な再編成が、がんゲノムのクロマチン折りたたみマップを大きく変化させた。近傍の遺伝子の2倍以上の発現変化を引き起こしたのは、境界を欠失したうちの14%のみであったことは重要である。