Analysis

がん種横断的全ゲノム解析:全ゲノム塩基配列決定を用いた2,658のヒトがんにおけるクロモスリプシスの包括的解析

Nature Genetics 52, 3 doi: 10.1038/s41588-019-0576-7

クロモスリプシス(染色体粉砕)は、ゲノムの大規模な再編成が集中的に起こる変異であり、がんやその他の疾患において見られる。がんの選択された種類における最近の研究から、クロモスリプシスの起こる頻度は、当初の低分解能のコピー数データから得られた推測値よりもずっと高いのではないかと考えられている。本論文では、国際がんゲノムコンソーシアム(ICGC:International Cancer Genome Consortium)およびがんゲノムアトラス(TCGA:The Cancer Genome Atlas)におけるがん種横断的全ゲノム解析(PCAWG:Pan-Cancer Analysis of Whole Genomes)コンソーシアムの一環として、38種類のがんの2658例の腫瘍に見られるクロモスリプシスのパターンを、全ゲノム塩基配列決定データから解析した。クロモスリプシス事象はがん全体に一般的に見られ、いくつかの種類のがんでは50%を超える頻度であることが分かった。クロモスリプシスの標準的なプロファイルは、2つのコピー数の状態の間での振動であるが、クロモスリプシスの事象のかなりの割合には、多数の染色体やさらなる構造変化が伴うことが分かった。非相同末端結合に加えて、複製関連過程や鋳型の挿入に関するシグネチャーも検出された。またクロモスリプシスは、がん遺伝子の増幅や、ミスマッチ修復関連遺伝子などの遺伝子の不活性化に関与することが分かった。これらの知見から、クロモスリプシスはヒトがんのゲノム進化を推進する主要な過程であることが示された。

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