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エピジェネティクス:発生遺伝子の発現は、ヒストンH3K4トリメチル化とは結び付いておらず、COMPASS、ポリコーム、DNAメチル化の平衡を介している
Nature Genetics 52, 6 doi: 10.1038/s41588-020-0618-1
COMPASSタンパク質ファミリーはヒストンH3リシン4(H3K4)のメチル化を触媒していて、このファミリーに属する因子は遺伝子発現の調節に不可欠である。MLL2/COMPASSは、多くの発生遺伝子やバイバレントなクラスターのH3K4をメチル化する。MLL2依存性の転写調節を理解するために、マウス胚性幹細胞において、レポーターとしてMLL2依存性遺伝子を用い、CRISPRを基盤とするスクリーニングを行った。MLL2の遺伝子発現における機能は、PRC2やDNAメチル化装置を接近させないことにより、発生遺伝子の抑制を防ぐことであると分かった。従って、MLL2が存在しない場合の抑制は、PRC2やDNAメチルトランスフェラーゼの阻害によって減弱した。さらに、そのような座位のDNA脱メチル化はMLL2依存性遺伝子の再活性化につながり、これはDNAメチル化の除去によってだけでなく、PRC2の動員のためにすでにCpGメチル化された領域を開き、ポリコーム抑制遺伝子でPRC2が希釈されることによっても起こった。これらの知見は、クロマチンのこれら3つのエピジェネティック修飾因子の状態とその働きが転写の決定を調整できる仕組みを明らかにしていて、また、H3K4トリメチル化ではなく、酵素の状況による能動的な抑制の防止がMLL2/COMPASSの標的での転写調節の基礎であることを実証している。