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腫瘍転移:複数のがんの原発腫瘍と転移腫瘍のペアにおけるクローン性と全身性拡散のタイミングについての解析
Nature Genetics 52, 7 doi: 10.1038/s41588-020-0628-z
転移はがんに伴う死の主要な原因であるが、自然歴、クローン進化、治療の影響についてはほとんど明らかになっていない。本論文では、乳がん、大腸がん、肺がんの患者136人について、原発腫瘍と転移腫瘍457対の試料の全エキソーム塩基配列決定(WES)データを解析した。これには未治療転移腫瘍(n = 99)と治療後転移腫瘍(n = 100)が含まれている。治療後転移腫瘍は、転移腫瘍にしか見られない「ドライバー」変異を持つことが多いが、未治療転移腫瘍にはこのような変異が見られなかったことから、治療がクローン進化を促進すると考えられる。ポリクローナルな播種は、未治療のリンパ節転移腫瘍(29例中17例、59%)や、未治療の遠隔転移腫瘍(70例中20例、29%)によく見られたが、治療後の遠隔転移腫瘍ではその頻度は低かった(94例中9例、10%)。転移腫瘍固有のクローン変異の数が多くはないことは、早期に転移播種が起こることと矛盾せず、このような変異はこれらのがん診断時の2〜4年前に生じたと推定された。さらに、これらのデータから、転移の自然経過に対する選択圧は、初期の腫瘍形成の段階に比べて緩いこと、転移腫瘍に固有の変異は、がん拡散のドライバーではないが、薬剤耐性には関連していることが示唆された。