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エピジェネティクス:近傍配列により誘導される修正と連動する不正確なDNMT1活性は、ロバストかつ柔軟なエピジェネティック遺伝を可能にする

Nature Genetics 52, 8 doi: 10.1038/s41588-020-0661-y

DNAメチル化をはじめとするエピゲノムは、体細胞分裂を通じて安定的に伝えられる。しかし、単一細胞クローン増殖では不均一なメチロームが生み出されることから、エピジェネティックな変動が絶え間なく起きているにもかかわらず、DNAメチロームはどのようにして安定的に保たれるのかという疑問が生じる。今回我々は、DNMT1〔DNA(cytosine-5)-methyltransferase 1〕しか持たない細胞のクローン集団は、不均一なメチロームを生み出し、このメチロームが細胞の増殖と分化においてロバストに伝えられることを報告する。我々のデータは、DNMT1は不正確な維持活性と、おそらく弱いde novo(新規修飾)活性を持ち、それが自然発生的な「エピ変異」につながることを示している。しかし、これらのエピ変異は、近傍配列が誘導する機構を介して修正される傾向があり、この機構は、DNMT1が持つ環境感受性のde novo活性(「チューナー」)と維持活性(「スタビライザー」)により可能になっていると思われる。de novo活性と維持活性について一塩基分解能のマップを作成することにより、H3K9me2/3標識された領域ではde novo活性が亢進しており、CpGアイランドでは維持活性もde novo活性も低いことが分かった。不正確なエピジェネティック装置が近傍配列により誘導される修正と組み合わされることで、ロバストだが柔軟なエピジェネティック遺伝の根底にある基本的な機構が形成されていると考えられる。

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