Perspective

がん:がんの生態学的および進化的ダイナミクスの解明

Nature Genetics 52, 8 doi: 10.1038/s41588-020-0668-4

腫瘍のイニシエーションとプログレッションは、遺伝的変化の蓄積によって駆動される体細胞の進化の過程であり、そうした変化の一部が選択的適応を示すことにより宿主細胞を有利にする。遺伝子を中心に置くこのモデルにより、がん生物学の研究分野が形成され、がんの病態生理の解明が進められてきた。しかし重要なのは、それぞれの遺伝子型は、さまざまな微小環境条件への順応を可能にする多様な表現型形質をコードしているということである。エピジェネティックな変化や転写の変化もまた、進化に必要な遺伝性の多様な表現型に寄与している。加えて、がん細胞と周囲の間質細胞や免疫細胞との間の自律的・非自律的シグナル伝達による相互作用が、生存競争に影響を及ぼす可能性もある。従って、腫瘍のプログレッションの機構を解明することが、その進化的・生態学的ダイナミクスを理解する上で必要である。本稿では、腫瘍のプログレッションを空間的・時間的に特徴付けるための技術的進歩とモデル系について概説する。また、実験と計算モデルを統合することの重要性と、そうしたことを通じて、がんの制御に有用な情報を提供する機会とすることについて論じる。

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