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微生物:8956人のドイツ人におけるゲノムワイド関連解析から腸のマイクロバイオームに及ぼすABO組織-血液型の影響が特定される
Nature Genetics 53, 2 doi: 10.1038/s41588-020-00747-1
腸のマイクロバイオームは、多数の炎症疾患、神経疾患、腫瘍において、重要な調節要因として関与している。しかし、最近のゲノムワイド関連解析は、得られる結果に一貫性がなく、検出力が低く、ほとんど再現性がないため、ヒト宿主の遺伝的性質がマイクロバイオームの組み立てや構造に関与する役割を担うかは明らかになっていない。とはいえ、双生児研究からは、宿主の遺伝的性質がマイクロバイオーム組成のドライバーであることが明確に示唆されている。今回我々は、ドイツ人8956人に関するゲノムワイド関連解析で、細菌の単一分類群と全マイクロバイオーム組成に関連する38の遺伝的座位を特定したことを報告する。さらなる解析から、ABO組織-血液型やFUT2分泌型状態と、バクテロイデス属(Bacteroides)およびフィーカリバクテリウム属(Faecalibacterium)の種との間に見つかった関連が確認された。メンデル無作為化解析からは、腸内微生物が病因性の影響と保護的な影響を持つことに加え、炎症性腸疾患にはクレード特異的な影響を及ぼすことが示唆された。宿主、宿主の遺伝学的性質、宿主に関連する微生物群集を「メタ有機体」として包括的に調べる今回の手法は、疾患の病因についての我々の理解を深め、また、疾患の治療や管理に微生物相を組み入れられる可能性を示している。