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遺伝子発現:γグロビンプロモーターでの転写因子の競合がヘモグロビンのスイッチングを制御する
Nature Genetics 53, 4 doi: 10.1038/s41588-021-00798-y
BCL11Aは、胎児型ヘモグロビン(HbF、α2γ2)レベルの主要な調節因子で、成体の赤血球系細胞においてプロモーターに直接結合してγグロビンの発現を抑制することで、成体型ヘモグロビン(HbA、α2β2)へのスイッチとして働く。我々は、BCL11Aが抑制を開始する仕組みを明らかにするために、CRISPR–Cas9、dCas9、dCas9-KRAB、dCas9-VP64によるスクリーニングを用いて、γグロビンプロモーターを調べ、BCL11A結合部位の近傍に活性化因子が結合する1つの配列があることを見つけた。我々は、CUT & RUNと塩基編集を用いて、この近位のCCAATボックスが活性化因子NF-Yによって占有されることを示す。BCL11Aは、立体障害を介してNF-Y結合と競合し、抑制を開始する。BCL11Aを除去するとNF-Yによる占有が迅速に確立され、その後に、γグロビン抑制の解除や座位制御領域(LCR)–グロビンのループ形成が起こる。我々の知見から、> 50 kbのβグロビン遺伝子クラスター内で起こる胎児型から成体型へのグロビン遺伝子発現の切り替えは、γグロビンプロモーター内の別個の領域で生じる、段階選択的に働く抑制因子と普遍的活性化因子との間の競合によって開始することが明らかになった。