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ライムギ:高品質なゲノムアセンブリによりライムギのゲノムの特徴と農学的に重要な遺伝子が明らかになる
Nature Genetics 53, 4 doi: 10.1038/s41588-021-00808-z
ライムギは食用および飼料用として有用な作物であり、コムギやライコムギの品種改良のための重要な遺伝資源であるとともに、イネ科植物の比較ゲノム研究を効率的に行う上で欠かせない材料である。我々は中国におけるライムギのエリート品種であるWeining種のゲノム塩基配列決定を行った。その結果、コンティグから構築されたゲノム塩基配列(7.74 Gb)は、推定ゲノムサイズ(7.86 Gb)の98.47%をカバーしており、構築されたゲノム塩基配列の93.67%(7.25 Gb)は7本の染色体のいずれかに割り当てられた。構築されたゲノムの90.31%は反復配列により構成されていた。すでにゲノム塩基配列が解読されているコムギ連(Triticeae)の他の植物種と比較して、ライムギではレトロトランスポゾンDaniela、Sumaya、Sumanaの大幅な増殖が認められた。構築されたWeining種のゲノムをさらに分析した結果、ライムギにおいてゲノム全域にわたって見られる遺伝子重複、デンプンの生合成に関わる遺伝子群への遺伝子重複の影響、プロラミン遺伝子群の座位の染色体上での複雑な構成、早期出穂をもたらす要因となる遺伝子発現の特性、栽培化に関連したと推定される染色体領域や遺伝子座について新たな知見が得られた。本研究で解読されたゲノム塩基配列により、ライムギや類縁のイネ科作物のゲノム研究および育種研究が加速するだろう。