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高血圧:腎臓のマルチオミクス解析による高血圧の遺伝的機序の解明
Nature Genetics 53, 5 doi: 10.1038/s41588-021-00835-w
腎臓は血圧調節、高血圧、降圧療法において重要な役割を果たしている臓器である。しかし、腎臓を介した高血圧易罹患性の遺伝的機序は、まだよく分かっていない。今回我々は、ゲノムワイド関連解析(GWAS)により特定された血圧指標に関連するバリアントが、腎臓のトランスクリプトームとエピゲノムに及ぼす効果を明らかにする目的で、最大430人から得た腎臓検体の遺伝子型、遺伝子発現、選択的スプライシング、DNAメチル化に関するプロファイルを統合的に解析した。GWASにより特定された血圧に関連を有するバリアントのうち、腎臓における標的として特定できたものは479(58.3%)あった。また、GWASにより特定された血圧に関連する腎臓の遺伝子のうち49が、210種類の承認済医薬品の標的として対応付けられた。共局在解析とメンデルランダム化解析により、血圧との因果関係を示す証拠のある腎臓に固有の179の遺伝子が特定された。メンデルランダム化解析では、高血圧患者の合併症としてよく見られる腎疾患に対する血圧の影響も明らかとなった。まとめると、本研究では、血圧の遺伝的調節および遺伝的に受け継いだ高血圧易罹患性に重要な関連を有する遺伝的バリアント、腎臓遺伝子、分子機構、生物学的経路を明らかにした。