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発生:ヒトの顔面と脳の形状に共有される遺伝率
Nature Genetics 53, 6 doi: 10.1038/s41588-021-00827-w
モデル生物と臨床遺伝学から得られている証拠から、発生中の脳と顔面の間に協調があることが示唆されている。しかし、一般的に見られる遺伝的ばらつきにおいて、この結び付きの役割は分かっていない。今回我々は、ヨーロッパ系の1万9644人において、大脳皮質表面の形態についての多変量ゲノムワイド関連解析を行い、脳の形状に影響を及ぼす472のゲノム座位を特定し、そのうちの76座位は顔面の形状にも関連していることを明らかにした。共有される座位には、頭蓋顔面の発生に関与する転写因子に加え、脳と顔面のクロストークに関与するシグナル伝達経路の因子が含まれている。脳の形状の遺伝率は、前脳オルガノイドあるいは顔面の前駆細胞のどちらかの活性な調節領域の近傍に同等に濃縮されている。しかし、ゲノムワイド関連解析によって見つかった脳と顔面に共有されるシグナルと、行動と認知の形質に影響を及ぼすバリアントとの間には、有意な重なりは検出されなかった。これらの結果から、胚形成の初期に、顔面と脳が構造的効果とパラクリンシグナル伝達の両方を介して相互の形成に影響を及ぼし合うことが示唆されるが、この相互作用は、認知機能に関連するその後の脳の発達には影響を及ぼさない可能性がある。