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ワタ:栽培ワタの地理的分化と繊維品質改良のゲノム的基盤
Nature Genetics 53, 6 doi: 10.1038/s41588-021-00844-9
作物遺伝資源を対象とした大規模なゲノム調査は、好ましい形質の遺伝的構造を理解するために重要である。しかし、栽培ワタでは、その地理的分化と繊維品質の向上に関するゲノム基盤についてはあまり分かっていない。今回我々は、3248の四倍体ワタゲノムを解析し、Aゲノム6番染色体とAゲノム8番染色体の広範な染色体逆位が栽培リクチメンGossypium hirsutumの地理的分化の基盤にあることを確認した。また、ハプロタイプの多様性が在来種に由来することを明らかにした。これは栽培ワタの適応進化を理解するために不可欠な知見である可能性がある。遺伝子移入の解析と関連解析からは新たな繊維品質関連座位が特定され、2系統の2倍体ワタから移入された対立遺伝子が繊維品質の向上に大きな影響を与えることが示された。これらの座位は、繊維品質の向上を妨げていた障害を克服するために大いに役立った可能性がある。本研究により、長年の品種改良によってワタゲノムにもたらされた重要なゲノムシグネチャーのいくつかが明らかになるとともに、研究者コミュニティーが利用できるゲノム情報資源を充実させる多くのデータが得られた。