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チャノキ:ハプロタイプレベル分解能のゲノムアセンブリーによりチャノキ
Nature Genetics 53, 8 doi: 10.1038/s41588-021-00895-y
チャノキは世界的に重要な飲料作物であり、主に挿し木などの栄養繫殖によってクローンとして栽培されている。これまでにも研究されてはきたが、その遺伝的、進化的歴史の解明にはさらなる研究を要する。本論文で我々は、ウーロン茶の栽培品種であるTieguanyin(鉄観音)のハプロタイプレベル分解能のゲノムアセンブリーを報告する。対立遺伝子特異的な発現を解析した結果、長期にわたるクローナル繫殖を通じて蓄積された変異に対応すると考えられる機構が見つかった。ツバキ属Camelliaの190アクセッションを用いて行った集団ゲノム解析からは、広く栽培されている2変種、中国種(var. sinensis)とアッサム種(var. assamica)が互いに独立した進化の歴史を有し、栽培化が並行して行われたことが判明した。また、広範な種内および種間の遺伝子移入の痕跡が認められ、それが現在の栽培品種における遺伝的多様性に寄与していることが明らかとなった。強い選択圧がかかったことを示す遺伝的シグネチャーは、風味の特徴をもたらす生合成経路や代謝経路に関連する遺伝子群や、茶業における「緑の革命」に関連すると思われる遺伝子群に見られた。本研究結果は、チャノキCamellia sinensisの進化の歴史に分子遺伝学的な知見をもたらし、作物としてのチャノキにおいて望ましい形質を強化するような遺伝子編集を可能にするゲノム情報資源を提供するものである。