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神経発達障害:自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害および症例サブグループの遺伝学的構造の共通点と相違点を明らかにする
Nature Genetics 54, 10 doi: 10.1038/s41588-022-01171-3
注意欠陥多動性障害(ADHD)と自閉症スペクトラム障害(ASD)は高い遺伝性の神経発達障害であり、それらの遺伝的病因はかなり重複している。今回我々は、大規模データセットによる疾病間解析を行い、それらの間で共通する遺伝的病因とそれぞれに固有の遺伝的病因について調べた。その結果、これらの疾患で共通した座位が7つと、これらの疾患で別々な座位が5つ見つかった。後者の5つの座位はいずれも、2つの疾患で対立遺伝子が逆の方向性を示し、学業成績、神経症傾向、局所脳体積その他の形質との有意な関連を示した。また、脳のトランスクリプトームデータとの統合により、有意に関連する複数の遺伝子を特定し、優先順位付けを行うことができた。この2つの疾患の両方に関連した共通のゲノム部分は、他の精神医学的表現型とも強く相関していたのに対して、異なる部分は認知形質と最も強く相関していた。追加の解析では、ASDとADHDの両方と診断された患者は、両疾患に対する遺伝的素因を二重に持っており、ASDのみあるいはADHDのみのサブグループと比較して、他の形質に対する遺伝的相関に独特のパターンを示すことが明らかになった。これらの結果は、一方または両方の疾患の発生に関する生物学的基盤と、ADHDとASDを分ける精神病理学的因子の生物学的基盤についての手掛かりを示している。