Technical Report
一細胞解析/神経科学:ヒトニューロンの一細胞ゲノム塩基配列決定から調節配列に体細胞点変異や体細胞インデルが豊富に見られることが明らかになる
Nature Genetics 54, 10 doi: 10.1038/s41588-022-01180-2
一細胞DNA塩基配列決定によって体細胞変異を正確に検出することは、増幅に関係するアーティファクト(人工物)の影響があるため困難である。このアーティファクトの影響を軽減するために、最近、増幅技術が改良され、一次鋳型指向性増幅(PTA:primary template-directed amplification)法が導入された。本論文では、PTA法で増幅した52の単一ニューロンの全ゲノム塩基配列決定データを、SCAN2(Single Cell ANalysis 2)法により解析した。SCAN2法は、我々が開発した新しい遺伝子型判定解析法で、PTAデータにおいて体細胞の一塩基バリアント(SNV)と小さな挿入および欠失(インデル)を特定する際に変異シグネチャーと対立遺伝子バランスを利用するものである。我々の解析から、年齢とともに単一ニューロンレベルで非クローン性体細胞変異が増加することを確認したが、その推定蓄積率については、1年当たり16 SNVに修正された。また、他の増幅方法におけるアーティファクトの影響も明らかになった。最も重要なことは、体細胞インデルが1個のニューロン当たり1年に少なくとも3個増加すること、またこれがエンハンサーやプロモーターなどのゲノムの機能領域に高頻度に見られることが分かったことである。我々のデータから、遺伝子調節配列のインデルが、ヒトニューロンにおけるゲノムの完全性にかなりの影響を及ぼすことが示唆された。