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冠動脈疾患:100万人を超える参加者における冠動脈疾患のリスクバリアントおよび遺伝子の発見と体系的な特徴付け
Nature Genetics 54, 12 doi: 10.1038/s41588-022-01233-6
複雑疾患に関連する遺伝的座位の発見に、疾患の病因となる機構の解明は追いついていない。本論文では、冠動脈疾患(CAD)のゲノムワイド関連解析(GWAS)を、CAD症例18万1522人を含む、主にヨーロッパ系の参加者116万5690人において行った。241の関連が検出され、そのうちの30が新規座位であった。日本人のGWASとの祖先系横断的メタ解析により、さらに38の新規座位が明らかになった。機能情報によるファインマッピングを用いて、病因の可能性があるバリアントに優先順位を付けると、42の関連において、95%信用セットに含まれるバリアントを5未満に絞り込むことができた。類似性に基づくクラスタリングから、初期発生過程、細胞周期シグナル伝達、血管細胞の移動および増殖が、CADの病因に役割を持つことが示唆された。8つの補完的な手法を組み合わせて、220の候補原因遺伝子の優先順位付けを行ったが、そのうちの123候補遺伝子は3つ以上の手法によって支持された。CRISPR–Cas9を用いて、MYO9Bのエンハンサーの効果を実験で検証し、その結果これは、血管細胞の運動調節がCADリスクに影響すると考えられた。我々の解析により、CADの250を超えるリスク座位の同定とその体系的特徴付けに成功し、CADの原因と推定される機構を実験によって調べる際の情報が得られた。