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ワタ:ワタ属Gossypiumの進化過程で生じたゲノムの革新的変化と調節機構の再編
Nature Genetics 54, 12 doi: 10.1038/s41588-022-01237-2
表現型の多様性と進化に伴う革新的変化は、突き詰めればゲノム配列の変化と調節ネットワークの再編に由来する。我々は、ワタ属Gossypiumの代表的な10系統の2倍体ゲノムを用いてパンゲノムを構築した。本論文で、ゲノム進化の歴史と系統特異的なトランスポゾン増幅がゲノム構成の差異に与えた影響について記述する。3D構造に関してパンゲノムを構築したところ、トランスポゾンに起因するゲノムサイズの変化が、高次クロマチン構造の再編とクロマチンインタラクトームの再編の両方に進化的に関係していることが明らかになった。我々はクロマチン構造の違いとワタ繊維の表現型の違いとを結び付け、また繊維の発生過程のトランスクリプトーム1005種類を塩基配列決定することにより、繊維長の遺伝的基盤を明らかにする遺伝的調節機構のバリアントを同定した。さらに、パンゲノム、3Dパンゲノム、遺伝的調節のデータを資源として用いることにより、紡績可能な長さを持つワタ繊維の進化的基盤を明らかにした。本研究はゲノムの構造と調節の進化に新たな知見をもたらし、レギュロームに基づくアプローチを可能にすることにより、今後のワタの品種改良に役立つものと期待される。