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偏頭痛:偏頭痛10万2084症例のゲノムワイド解析によって明らかになった123のリスク座位とサブタイプ特異的リスク対立遺伝子
Nature Genetics 54, 2 doi: 10.1038/s41588-021-00990-0
偏頭痛は世界中で10億人以上に影響を及ぼしているが、その遺伝学的基盤についてはほとんど分かっていない。今回我々は、偏頭痛10万2084例と対象群77万1257例のゲノムワイド関連解析を行い、123の座位を明らかにし、そのうちの86はこれまでに知られていないものだった。これらの座位によって、偏頭痛の2つの主要なサプタイプ(前兆のあるタイプとないタイプ)に対し、共通する遺伝学的要素と異なる遺伝学的要素を明らかにできる可能性が得られた。サブタイプ情報のある2万9679症例を用いたリスク座位の階層化から、前兆のある偏頭痛で特異的に見られる3つのリスクバリアント(HMOX2、CACNA1A、MPPED2)と、前兆のない偏頭痛で特異的に見られる2つのリスクバリアント(SPINK2近傍とFECH近傍)、さらに、サブタイプに関わらず偏頭痛の感受性を増加させる9つのリスクバリアントが見つかった。新しいリスク座位には、最近の偏頭痛特異的薬剤標的をコードする遺伝子[具体的には、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CALCA/CALCB)とセロトニン1F受容体(HTR1F)]が含まれていた。全体として、偏頭痛関連バリアント全体のゲノムアノテーションを見ると、血管系と中枢神経系の両方の組織・細胞タイプが多く見られることから、偏頭痛の病態生理の根底には神経血管機構があることが明確に裏付けられた。