Perspective
神経科学:ニューロンゲノムの完全性と可塑性に対するプログラムされたDNA損傷の脅威
Nature Genetics 54, 2 doi: 10.1038/s41588-021-01001-y
ニューロンのゲノムは、DNA修復の喪失や低下に対して特に感受性が高く、DNA修復の障害は神経系疾患を引き起こす。ニューロンゲノムでは確率論的にDNA損傷が起こることはよく知られており、これは脳内の大規模な酸化ストレスが原因だと考えられる。しかし、最近の研究では、ニューロンで予想外に高レベルの「プログラムされた」DNA切断が見つかっており、我々は、これはニューロンの発生、分化、維持に固有の生理学的なDNA代謝過程の際に起こると提唱する。プログラムされたDNA切断が、ニューロンの正常な生理条件や病理条件においてどのような役割を持つかは、これまでのところそれほど調べられていない。しかし、神経変性疾患の塩基配列決定解析を細胞集団および単一細胞レベルで行った結果からは、加齢に関連した体細胞変異シグネチャーが見つかり、これらはゲノムの調節領域で豊富に見られることが明らかにされている。今回我々は、ニューロンにおけるDNA修復についての考え方を提唱し、正常なニューロン機能に固有のプログラムされたゲノム切断がもたらす誤りから、ゲノムを保護するDNA修復の働きについて述べる。