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コムギ:ロングリードゲノム塩基配列決定法によりパンコムギの病害抵抗性遺伝子のクローニングが可能になる
Nature Genetics 54, 3 doi: 10.1038/s41588-022-01022-1
大きく複雑な作物ゲノムから農学的に重要な遺伝子をクローニングすることはいまだに困難である。我々は、高精度ロングリードシークエンシング(HiFiリード)、光学ゲノムマッピング解析、3C法(chromosome conformation capture)を組み合わせることにより、南アフリカ産パンコムギ(Triticum aestivum)の栽培品種Kariegaについて、14.7ギガベースの染色体規模のゲノムアセンブリーを行った。構築されたゲノムの連続性は、これまでに報告されていたコムギゲノムより1桁優れたものとなった。栽培品種Kariegaは、壊滅的な被害をもたらすコムギ黄サビ病に対して安定した抵抗性を示す。我々は、品種特異的な病害抵抗性遺伝子Yr27を特定し、この遺伝子が細胞内免疫受容体をコードし、コムギ黄サビ病に対する抵抗性の発現に主要な役割を果たしていることを明らかにした。Yr27 遺伝子は葉サビ病に対する抵抗性遺伝子 Lr13と対立遺伝子関係にあり、Yr27タンパク質とLr13タンパク質は97%の塩基配列相同性を示す。本研究結果は、染色体規模のコムギゲノムアセンブリーを作成し、それを用いて遺伝子クローニングを行う方法の実行可能性を示すとともに、単一コピー遺伝子の高度に類似した対立遺伝子が異なる病原体に対する抵抗性を付与できるという実例を提示しており、この知見は将来、遺伝子改変により複数の病原体認識特異性を持つYr27対立遺伝子を作り出すための基礎情報となる可能性を示している。