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がん:がんにおけるクロマチン接近性の対立遺伝子不均衡から、候補となる原因リスクバリアントとその機構が明らかになる
Nature Genetics 54, 6 doi: 10.1038/s41588-022-01075-2
ゲノムワイド関連解析(GWAS)から、がんの多くの生殖細胞系列リスクバリアントが特定されているが、これらのバリアントが機能する機構はほとんど分かっていない。今回我々は、23タイプのがんについてATAC-Seq(assay for transposase-accessible chromatin with sequencing)を行い、その406のがん試料を用いて、7,262の生殖細胞系列の対立遺伝子特異的接近性QTL(as-aQTL:allele-specific accessibility QTL)を明らかにした。7つのがんGWASにおいて、「がんas-aQTL」には、他のどの機能的アノテーションよりも、がんリスクの遺伝率が強く濃縮されていた(最大145倍)。がんas-aQTLの大部分は、転写因子(TF)モチーフが直接変化していて、機能的スクリーニングによりTF結合と遺伝子発現が異なっていることが示された。as-aQTLを推定のリスク機構に結び付けるために、レギュロームワイド(regulome-wide)な関連解析(RWAS)を導入した。RWASから、既知の乳がん座位および前立腺がん座位の70%超に、接近可能なピークとの遺伝的関連が見つかり、調べた全てのタイプのがんで新しいリスク座位が見つかった。as-aQTLの発見、モチーフ解析、RWASを統合することで、候補となる原因調節配列とそれらの上流の有望な調節配列が見つかった。我々の研究は、がんas-aQTLとRWAS解析が、がんリスクの遺伝的構造を研究するための強力なツールであることを実証している。