非アルコール性脂肪性肝疾患:非アルコール性脂肪性肝疾患の尺度として原因不明の慢性ALT上昇を用いて行った複数祖先系ゲノムワイド関連解析、およびその組織学的および放射線学的な検証
Nature Genetics 54, 6 doi: 10.1038/s41588-022-01078-z
慢性肝疾患の原因として、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が増え続けている。米国の退役軍人100万人プログラム(Million Veteran Program:MVP)のcALT症例9万408人と対照12万8187人を用いて、NAFLDに関する複数祖先系ゲノムワイド関連解析(GWAS)を行った。その際、NAFLDの定義としては、他の肝疾患を伴わないアラニンアミノトランスフェラーゼ値の慢性上昇(cALT)とした。その結果、ゲノムワイドな有意水準を超える座位が77個見つかった(P < 5 × 10−8)。そのうちの25座位はこれまでにNAFLDあるいはアラニンアミノトランスフェラーゼとの関連が示されていなかった。さらにこれらとは別に、ヨーロッパ系米国人のみの解析で見つかった座位が1つ、およびアフリカ系米国人のみの解析で見つかった座位が2つあった。外部のコホート、すなわち組織学的に定義されたNAFLDコホート(症例7397人および対照5万6785人)あるいは放射線画像により定義されたコホート(n = 4万4289)を用いた追試では、17の一塩基多型(SNP)が再現され(P < 6.5 × 10−4)、そのうち9つは新規であった(TRIB1、PPARG、MTTP、SERPINA1、FTO、IL1RN、COBLL1、APOH、IFI30)。多面的関連の解析から、複数祖先系の77座位のうち61座位と、追試で再現された17個の全てのSNPが、代謝形質および/あるいは炎症形質にも関連していることが示され、遺伝的構造の複雑なモデルが明らかになった。cALT、組織学、および画像化を統合する我々の手法からNAFLDへの遺伝的な罹りやすさについての新しい手掛かりが明らかにされた。