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クローン造血:20万453人のゲノムワイド解析からクローン造血の原因と結果についての新たな手掛かりが得られた
Nature Genetics 54, 8 doi: 10.1038/s41588-022-01121-z
クローン造血(CH)とは、血液幹細胞やその子孫細胞が体細胞性ドライバー変異によってクローン増殖を起こすことであり、3分の1以上の人に見られるが、ほとんど解明されていない。本論文では、英国バイオバンクの200,453人の参加者の遺伝学的データを解析し、CHの遺伝的素因の全容を解明すべくマッピングを行った。その結果、ヨーロッパ系集団の生殖細胞系列に見られるCHとの関連を4座位から14座位に増加させた。これら新規座位の遺伝子は、DNA損傷修復(PARP1、ATM、CHEK2)、造血幹細胞の移動/ホーミング(CD164)、骨髄性腫瘍形成(SETBP1)に関係していた。いくつかの関連はCHサブタイプ特異的であり、TCL1AおよびCD164のバリアントは、2つの最も一般的なCHサブタイプであるDNMT3A変異型CHとTET2変異型CHに対して逆向きの関連を示したことから、CH発生においてこれら2座位が重要な役割を担っていることが示された。メンデル無作為化解析から、喫煙と白血球のテロメア長が長くなることがCHの原因となるリスク要因であり、また、CHの遺伝的素因によって骨髄増殖性腫瘍、非血液学的悪性腫瘍、心房細動、および血液のエピジェネティックな老化のリスクが高まることが示された。