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ミクログリア・レギュローム:ヒトミクログリアのレギュロームに関する遺伝学的解析によりアルツハイマー病リスク座位を絞り込む
Nature Genetics 54, 8 doi: 10.1038/s41588-022-01149-1
ミクログリアは脳の骨髄系細胞であり、神経免疫やアルツハイマー病(AD)の病因に重要な役割を担っているが、ミクログリア機能を制御する遺伝的制御の全体象とその制御法、そしてADにどのように関わっているのかは、よく分かっていない。今回我々は、150人のドナーからの初代ミクログリアに対してトランスクリプトームとクロマチン接近性のプロファイリングを行い、遺伝的に引き起こされる変化と、エンハンサーとプロモーター間(E–P)の細胞特異的な相互作用を見つけた。こられの解析を基にファインマッピング解析を行うと、21のADリスク座位に対する調節機構候補が見つかり、そのうちの18座位は単一の遺伝子に絞り込まれ、その中の3つは新規の候補リスク遺伝子だった(KCNN4、FIBP、LRRC25)。転写因子調節ネットワークからはADリスクの変動が明らかになり、SPI1がミクログリアでの発現とADリスクの重要な候補調節因子であることが分かった。ヒトミクログリアのレギュロームの変動を捉えた今回の包括的研究は、神経変性疾患の病因に対する手掛かりを与えてくれる研究資源となるだろう。