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脳遺伝学:アイソフォームレベルのトランスクリプトームワイド関連解析で明らかになった、ヒト脳での神経精神疾患の遺伝的リスク機構
Nature Genetics 55, 12 doi: 10.1038/s41588-023-01560-2
遺伝学とトランスクリプトーム参照パネルを統合する手法では、一部の形質関連座位におけるリスク遺伝子やリスク機構が優先される。その理由の1つには、分子的過程の結果の評価基準が全体的な遺伝子発現に過度に依存していることが挙げられる。脳では大規模なスプライシングにより、遺伝子ごとに多数の異なる転写産物アイソフォームが作られるので、この問題は脳で特に重要となる。相関構造の複雑さから、シス範囲(window)のバリアントからアイソフォームレベルのモデル化を行うには、方法論の刷新が必要である。今回我々は、遺伝学、アイソフォームレベルの発現、および表現型の関連を統合する多変量の段階的フレームワークであるisoTWASを紹介する。遺伝子レベルの手法と比較して、isoTWASはアイソフォームと遺伝子発現の両方の予測を改善し、検証可能な遺伝子をより多く生成し、15の神経精神医学的形質に関するゲノムワイド関連解析座位において形質の関連を発見する検出力を高めた。我々は、遺伝子レベルでは検出できないisoTWAS関連を複数明らかにし、統合失調症に関連するAKT3、CUL3、HSPD1のアイソフォーム、および複数の疾患に関連するPCLOのアイソフォームの優先順位付けを行った。以上の結果は、統合的手法にアイソフォームレベルの分解能を組み込むことが、脳関連では特に、形質の関連をより多く発見するために重要であることを示している。