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大麻使用障害:大麻使用障害の多祖先系集団ゲノムワイド関連解析で得られた、疾患生物学と公衆衛生に対する影響についての知見
Nature Genetics 55, 12 doi: 10.1038/s41588-023-01563-z
大麻の娯楽利用が多くの国で非犯罪化されつつあり、また医療利用も広く許可されているため、大麻使用障害の増加に対する懸念が高まっている。大麻使用障害には併存する疾患が多い。今回我々は、米国の退役軍人100万人プログラム(Million Veteran Program:MVP)において大麻使用障害のゲノムワイド関連解析を行い、その後、4つの広範な祖先系を持つ集団からなる105万4365人(ncases = 64,314)においてメタ解析を行った(これらの祖先系は参照パネルに基づいて決定されたもので、ヨーロッパ系n = 886,025、アフリカ系n = 123,208、混血アメリカ人n = 38,289および東アジア系n = 6,843からなる)。我々は集団特異的な手法を用いて、各祖先系集団内での一塩基多型に基づく遺伝率を計算した。一塩基多型に基づく統計的に有意な大麻使用障害の遺伝率は、最小の集団(東アジア系)を除く全ての集団で観察された。また、それぞれの祖先系集団に固有の座位がゲノム規模の有意性で見つかった(ヨーロッパ系で22座位、アフリカ系で2座位、東アジア系で2座位、混血アメリカ人で1座位)。遺伝情報に基づく因果関係解析では、大麻使用障害の遺伝的易罹患性が肺がんリスクに影響する可能性が明らかになったことから、将来的に予期せぬ医学的および精神医学的な公衆衛生上の結果がもたらされ得ることが示唆され、喫煙などの既知の他のリスク因子との関係を明らかにするさらなる研究が必要である。