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心血管疾患:静脈血栓塞栓症のゲノムワイド関連解析メタ解析によって93のリスク座位が同定され、単一遺伝子型と同等のリスク予測が可能となる
Nature Genetics 55, 3 doi: 10.1038/s41588-022-01286-7
6つのコホートから抽出した静脈血栓塞栓症(VTE)症例8万1190人と対照141万9671人について実施したゲノムワイド関連解析を報告する。93のリスク座位が同定され、そのうち62座位はこれまで報告されていないものであった。同定されたリスク座位の多くは、凝固カスケードや血小板機能に関係した機能をもつタンパク質をコードする遺伝子に集中していた。VTEの多遺伝子リスクスコア(PRS)により、高リスク者と低リスク者の両方を効果的に特定することができた。PRS分布の上位0.1%に属する人は、F2のバリアントG20210A(c.*97 G>A)やF5のバリアントp.R534Qのホモ接合型保有者または複合ヘテロ接合型保有者と同程度のVTEリスクを有していた。一方、PRS分布の下位10%に属するF2変異またはF5変異の保有者のリスクは、一般集団と同程度であった。さらに、遺伝的・臨床的なリスク因子に加えてPRSを導入することが、個人のリスク予測を大きく向上させることを実証した。静脈血栓症と動脈血栓症の間でどの程度まで臨床的リスク因子が共通しているかを調べるためにメンデルランダム化解析を行ったところ、動脈血栓症のリスク因子にはVTEの発症リスクを上昇させるもの(例えば、ボディマス指数高値や喫煙)と、低下させるもの(例えば、収縮期血圧やトリグリセリドレベル)があることが分かった。