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統合失調症:まれなタンパク質短縮型バリアントにより生じる統合失調症リスクは多様なヒト集団で保存されている
Nature Genetics 55, 3 doi: 10.1038/s41588-023-01305-1
統合失調症(SCZ)は慢性的な精神疾患であり、医療現場で遭遇する最も消耗的な疾患の1つである。最近行われたゲノムのタンパク質コード領域に関するSCZ研究の画期的な成果として、10の遺伝子で因果的役割が見つかり、進化的制約のある遺伝子中に、まれなバリアントのシグナルが集中していることが明らかになった。しかし、この研究や他のほとんどの大規模なヒト遺伝学研究は、主にヨーロッパ系の人に対して行われたものであり、非ヨーロッパ系集団でも知見の一般化が可能であるかどうかは不明である。この問題を解決するために、我々は、現在のSCZ遺伝学の知識に基づいて選択した161の遺伝子にカスタマイズした塩基配列決定パネルを設計し、1万1580症例の新たなSCZコホートと多様な祖先集団の1万555人の対照群で塩基配列決定を行った。先行研究を再現した結果が得られ、SCZでは進化的制約のある遺伝子において、まれなタンパク質短縮型バリアント(PTV)の負荷が有意に大きいことが明らかになった(オッズ比 = 1.48、P = 5.4 × 10−6)。合わせて3万5828件の症例と10万7877件の対照例からなる既存のデータセットを用いたメタ解析では、この過剰な負荷は、5つの祖先集団でおおむね一致していた。2つの遺伝子(SRRM2とAKAP11)がSCZのリスク遺伝子として新たに見つかり、1つの遺伝子(PCLO)がSCZ患者と自閉症患者で共通していることが明らかになった。まとめると、本研究の結果は、SCZの遺伝的構造であるまれな対立遺伝子スペクトラムが、多様なヒト集団で保存されていることを強く支持している。