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肥満:ヒトの脂肪分布の性的二形性の遺伝学
Nature Genetics 55, 3 doi: 10.1038/s41588-023-01306-0
肥満に関連した罹病率は腹部肥満で高いが、これはボディマス指数で調整したウエスト・ヒップ比(WHRadjBMI)として測定することができる。本研究では、肥満およびWHRadjBMIと関連する遺伝子を同定し、女性のWHRadjBMI遺伝子を制御していると予測される対立遺伝子感受性エンハンサーの特徴を明らかにした。ウエスト・ヒップ比に関連するいくつかのバリアントは、脂肪細胞の分化に関連するDNAモチーフをもつ霊長類特異的なAluレトロトランスポゾン内に位置していた。このことは、ヒトの脂肪分布の新たな遺伝要因として、脂肪のエンハンサーであるレトロトランスポゾンが関与していることを示唆している。さらに、女性でWHRadjBMIとの関連が最も強いSNX10遺伝子の脂肪生物学における役割を評価した。この遺伝子はヒトの脂肪細胞の分化と機能に必要であり、雌マウスの食事誘発性脂肪組織拡大に関与していたが、雄マウスではそのような関与は認められなかった。本研究で得られたデータによって、女性特有の脂肪分布の基礎となり、女性の代謝不全に影響を及ぼす遺伝子とその調節機構が明らかになる。