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肺疾患:複数祖先集団ゲノムワイド関連解析によって、肺機能と慢性閉塞性肺疾患リスクに影響する遺伝子と経路の解像度を向上
Nature Genetics 55, 3 doi: 10.1038/s41588-023-01314-0
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の根底には肺機能障害があり、肺機能障害は死亡率を予測する。本研究では、これまでで最大の参加者数(58万869人)による、肺機能の複数祖先集団ゲノムワイド関連解析のメタ解析を行った。その結果、1020の独立した関連シグナルが見つかり、これらのシグナルについて、バリアントから遺伝子への体系的なマッピングを行うことにより、2つ以上の基準を満たす559の遺伝子が見いだされた。これらの遺伝子は29の経路に豊富に含まれていた。個々のバリアントは祖先集団、年齢、喫煙のグループで不均一性を示し、遺伝的リスクスコアとしてまとめると、どの祖先集団グループでもCOPDとの強い関連が見られた。次に、精選した関連バリアント、および形質と経路特異的な遺伝的リスクスコアに対してフェノームワイド関連解析を行い、肺機能の基礎となる経路に介入した場合に起こり得る結果を推定した。新たな推定原因バリアント、遺伝子、タンパク質および経路が明らかになり、ここには既存の薬剤標的も含まれていた。これらの知見は、肺機能とCOPDの根底にある機構の理解を深め、また、機能ゲノミクス実験や将来的なCOPD治療に有用な情報となり得る。