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GWAS:遺伝的関連のネットワーク拡張によってヒトの細胞生物学的形質の多面効果マップが明らかになる
Nature Genetics 55, 3 doi: 10.1038/s41588-023-01327-9
相互作用するタンパク質は類似した機能を持つ傾向があり、その生物の同じ形質に影響を及ぼす。ゲノムワイド関連解析により、形質に関連する候補遺伝子のリストが得られるが、相互作用ネットワークを用いると、そのリストを拡大することができる。本論文では、1002のヒト形質について、ネットワークに基づいて形質関連遺伝子拡張を行うことで、既知の疾患遺伝子や薬剤標的が含まれてくることを明らかにした。ネットワーク拡張スコアの類似性から、基盤となる遺伝的過程や生物学的過程を共有すると考えられる形質グループが見いだせる。73の多面効果遺伝子モジュールが複数の形質に結び付けられること、また、タンパク質のユビキチン化やRNAプロセシングなどの過程に関与する遺伝子に濃縮されていることが分かった。ここで定義されている多面効果は、遺伝子欠失研究とは異なり、多細胞性に関連する過程を特異的にとらえていた。我々は、ヒト疾患に結び付けられるモジュールが既知の病因性バリアントを持つ遺伝子に濃縮されていること、これを用いて承認薬のリパーパシングのための標的をマッピングできる例を示す。さらに、ネットワーク拡張スコアを用いて、炎症性腸疾患のゲノムワイド関連解析座位の遺伝子を解析すると、機能的および遺伝的な強い裏付けを持つ炎症性腸疾患関連遺伝子群が示唆されることを示す。