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遺伝的多様性:混血者のありふれたバリアントが複雑形質に及ぼす因果効果の大きさは、いろいろな大陸の祖先に由来するゲノム領域間でほとんど差がない
Nature Genetics 55, 4 doi: 10.1038/s41588-023-01338-6
混血者(例えば、アフリカ系米国人)は、複数の大陸の祖先集団に由来するゲノム領域(局所的祖先ゲノム)をモザイク状に継承している。これを利用すると、異なる祖先系に由来するゲノムが形質に及ぼす遺伝的効果は、1つの集団内で類似するかということを調べることができる。本研究では、局所的祖先間に関する遺伝的因果効果の相関(radmix)を推定するアプローチを開発し、アフリカ系とヨーロッパ系の混血者(N = 53,001)を対象に、38の複雑形質について解析した。その結果、極めて高い相関(メタ解析radmix = 0.95、95%信頼区間0.93–0.97)が認められた。この値は、異なる大陸に祖先を持つ集団間に関する因果効果の相関よりもはるかに大きい。得られた結果は、ゲノムワイド関連解析で境界有意性を示した要約統計量から、回帰ベースの手法を用いて検証した。また、因果効果の祖先特異的なタグ付けや多遺伝子性のために、回帰ベースの手法では祖先間の違いが過大に評価されてしまうという現実的なシナリオも報告する。本研究の結果は、祖先の違いによる因果効果の差は非常に小さいと仮定した遺伝学的解析を促すとともに、多様な祖先を持つ人々を研究の対象とすることの重要性を示している。