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エピジェネティクス:ヒストンH2Bのアセチル化は活性エンハンサーの標識であり、CBP/p300標的遺伝子を予測する
Nature Genetics 55, 4 doi: 10.1038/s41588-023-01348-4
クロマチンの特性を利用した、ゲノムスケールでのエンハンサーマッピングは広く行われている。しかし、活性エンハンサーを他のシス調節配列と区別して、エンハンサーの強さを予測したり、その標的遺伝子を特定したりすることは難題である。本研究では、ヒストンH2BのN末端にある複数のリシンアセチル化部位(H2BNTac)が、活性エンハンサーのシグネチャーとなることを明らかにする。H2BNTacは、活性エンハンサー候補と一部のプロモーターの明確な標識となり、普遍的に活性なプロモーターとの区別に使用できる。H2BNTacの顕著な特異性の根底には2つの機構がある。1つは、H2BNTacはH3K27acと異なりCBP/p300によって特異的に触媒されることで、もう1つは、ヒストンH3–H4と異なり、ヒストンH2A–H2Bは転写を介したヌクレオソームリモデリングによって速やかに交換されることである。H2BNTac陽性のエンハンサー候補は、エンハンサー活性の直交アッセイで高い検証率を示し、内因的に活性なエンハンサーの大多数は、H2BNTacとH3K27acにより標識されていた。また、H2BNTac強度はエンハンサーの強さを予測し、CBP/p300標的遺伝子の予測において、現在の最先端モデルを凌駕していた。これらの知見は、きめ細かなエンハンサーマップの生成と、CBP/p300依存的遺伝子調節のモデル化に広範な意味を持つ。