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転移因子:転移因子の多様性は集団特異的なゲノム多様化、遺伝子調節、疾患リスクに関与する
Nature Genetics 55, 6 doi: 10.1038/s41588-023-01390-2
転移因子(ME)は、遺伝性の変異原であり、再帰的に構造バリアント(SV)を作り出す。MEバリアント(MEV)は、遺伝子型判定や統計遺伝学に組み込むことが難しく、ゲノムの多様化や形質に及ぼす影響は明らかになっていない。本論文では、ショートリードの全ゲノム塩基配列決定(WGS)データから、MEVの遺伝子型を正確に判定するツールを開発し、世界のヒト集団に適用した。予想外に、MEVの集団特異的な差異が見つかった。例えば、日本人集団におけるAlu挿入の分布は他の集団と異なった。MEVと発現量的形質座位(eQTL)マップを統合することで、MEVのクラスが、エンハンサーの作出あるいは減弱、転写後調節因子の誘導などの共通機序によって、組織特異的遺伝子発現を調節することが分かり、クラス規模で解釈が可能であることが裏付けられた。MEVは、SNVよりも遺伝子発現の変化と関連することが多いため、おそらく形質に影響を与える。MEVを用いたゲノムワイド関連研解析(GWAS)を行うと、ケロイドや筋膜炎に関連するLINE-1挿入など、疾患リスクの原因だと考えられる変異が明らかになった。この研究は、MEVがヒトの多様性と疾患リスクのトライバーであることを示唆している。